時は二十世紀初頭のヴェニス
美しい藍色と 茜色が混ざりあう 空と海
打ち寄せる波をみつめ
ぼんやりとたたずむ ひとりの貴婦人がいた
宮殿を追われ 愛する人を失った、、、
歴史の波に 翻弄されながらも
あるがままの運命を 受けとめようと決意する
どんな状況の中にも 明日は来る、、、
時が経ち…
パリのセーヌ川左岸にある ヴィエイユ・デゥタンブル通りの一角に
三角屋根の帽子屋が ありました
そのたたずまいに惹かれ お店の扉を開くと
年を重ねた店主が 出迎えてくれました
ミルキー色の壁紙には 淡いサーモンピンクのレースがかけられ
季節のお花の香りが お店全体に広がり
ロマンチックな雰囲気に 包まれています
エレガントで 素敵な帽子が 棚や壁に飾られ
出窓には ウェディングコサージュや ヘッドドレスが
美しく そして 可愛らしく 飾られていました
その中でも ひときわ目をひく帽子を手にとり かぶってみると…
そこには いつもとはどこか違う自分が 鏡に映っていました
憧れにふれられたような気持ちになり
思わず 笑みがこぼれました
その様子を見ていた女主店もまた 優しく微笑みました